慶應アルペン=フェライン山岳会(KAV)・岳酔会(OB会)の今後の改善方針 

 

T 入山前の実施事項の徹底(KAV)

今回の事故を振り返って、KAVとしては、入山前に以下の項目について、必ず実施するよう徹底します。

@山岳保険への加入

A登山計画の会への届出

B全ての山行計画についてOBのチェックを受けること

C全ての会員の登山計画は会が定める手続きを行い正式な登山計画とすること

 まず、従来からKAVでは会員は全員が都岳連山岳共済に加入してきましたが、今後も入山前には必ず山岳保険に加入するよう徹底します。これは、現役のみならず、岳酔会会員に対しても、同様で、入山前の保険加入を呼びかけることとしました。
 次に、所属する山岳会への登山計画の届出ならびに下山報告は保険と同様、山岳会員の最低限の義務ですが、個人的な山行計画として会に知らせないで登山を行う例がこれまでに何度かあり、些かこの原則が軽んじられていたことは否めません。しかし現実問題として事故が発生した場合には、会として迅速な対応をとる必要があることから、それがどんなにプライベートな要素の強い山行であっても、会員が会に登山計画を報告するよう徹底することとします。
  また、登山経験が乏しい学生にとって、その計画の妥当性等の評価及びチェックを岳酔会現役担当から受けることは無謀な計画を実施しないために、必要不可欠なことです。今後は、個人山行を含め、できる限り、OBチェックを受けるよう徹底することを考えております。私達の会には大学から登山を始めた会員も多く、経験豊富なOBによるチェックは、彼らが計画した山行計画をより客観的に判断することができると考えられます。
  これら会への計画届出・OBチェック・下山報告に加え、リーダーによる事前研究・準備会・学外行事届の提出など、会が定める山行のための手続きを全て行うと、その山行計画は正規の会の山行として認められます。  

 

U日常からの安全対策(KAV)

  挑戦する山が危険になればなるほど、厳しい状況判断を迫られ高度な登山技術が必要となります。また万一、事故に遭遇した場合には救急法の知識と技術が必要となります。しかしそれらは本来、入山する以前に身につけておかなくては手遅れであり、今回の遭難事故の反省から、日常からの安全対策が重要であることを実感しました。
今までのKAVの活動は専ら山行だけでしたが、講習会参加や勉強会など、今後は会を挙げて安全対策に取り組むことで、会員の危機認識を従来以上に向上させ、事故の再発を防止し、危険に打ち克ってゆくことを目標とします。

・「登山技術・知識の向上」
 いままで私達の山岳会では、登山技術・知識の継承は、基本的に実際の山行経験の中で先輩から学ぶことが一般的で、講習会への参加などそれ以上の勉強に関しては個人の意思に任せていました。
 しかしこれでは世代間で技術・知識がちゃんと継承されない可能性があります。また一旦は学習した物事でも、多くの経験をつんでゆくうちに知らず知らず妥協や油断が生じていることもありえるでしょう。そもそも山の知識・技術自体が日々進歩しているため、会の内部だけで知識や技術を継承していては、偏った、時代遅れのものになってしまうおそれがあります。
 そこで対応としては、毎年行っている気象・地図に関する勉強会の他にも、テーマを定めた勉強会を開き講習会に参加した会員によって新しい知識・技術を全員で検討するための勉強会を開くことを検討しています。
 また毎年冬季山行を行う会員を対象に雪上技術訓練を行ってきていますが、今期からは基本技術に止まらず遭難を想定した遭難救助技術・運搬技術の訓練にも重点を置いてゆきたいと考えています。

・「無線免許の取得」
 KAVでは、冬山では必ず無線を携行することをいままで義務付けてきました。しかし、昨今携帯電話が普及してきたこともあり、KAVでは無線免許を保持している会員は決して多くありません。たしかに簡単な山行であれば携帯電話でも十分間に合うでしょうが、無線機と比較した場合携帯電話はいまだに欠点が多く、今後は冬山以外の山行でもなるべく携行することが望ましいと考えています。ですから会としては、免許取得のための勉強会を開き、会員の免許取得を支援していくことを検討しています。

・「個人情報の管理」
 会員の登山計画書に記されていることよりも詳細な情報を山岳会が把握していることも重要だと考え、今回遭難時にKAVに知っておいてもらいたい情報を平時からデータベース化しておく試みとして、個人情報のファイルを新たに作ろうと考えています。各会員がのものを書き、随時更新するオリジナルを部室に、コピーを学生代表とOB現役担当の手元に一部ずつ揃えます。
項目は以下の通りです。
 

項目:A (写真)/学部学年/身長/体重/血液型/持病・既往症/保険の加入状況

   B 冬山経験・ザイルワーク習熟度の記述/登山歴/

     装備(雨具/シャツなど衣類/ザック/登山靴/プラブーツ)の色とメーカー 

V「遭難事故への対応」(KAV・岳酔会)

岳酔会はKAVのOBの親睦及び学生への援助を目的とした組織であり、従来からKAVで遭難事故が発生した場合には、岳酔会の現役担当者が岳酔会会員に連絡を回し、KAVと協力して対応策を講じるようにしています。同様にKAVでも在京連絡先がそれぞれKAV会員に連絡を回すようにしています。今回はKAV会員ではなく岳酔会会員の遭難事故ではありましたが、事故連絡後、現役とOBが速やかな対応を行うことができました。しかしながら、これに油断することなく、遭難時に備えた体制を整備していくことを考えています。以下に、遭難発生時の対応方法を参考に示します。

 

・最終下山日22時 遭難発生

 まず遭難発生の判断ですが、冬山の場合は、最終下山日の22時までに下山連絡が無い場合、在京連絡先と岳酔会現役担当が互いに確認の上、遭難発生と判断します。夏山の場合は、日帰りの沢登りなど夜遅くなっても行動が可能なので、最終下山日の翌日の22時までに下山連絡が無い場合に遭難発生と判断します。遭難と判断した場合、在京連絡先または岳酔会現役担当が遭難者の家族に連絡をとり、学生・OBに連絡を回し、翌日9時まで待機します。
 学生への連絡は、在京連絡先が役職就きの学生1名に連絡し、彼が全学生に連絡をつけ、その結果を在京連絡先に報告します。
 OB会員への連絡は岳酔会幹事会よりなされ、遭難救助活動のために、現地対策本部、在京連絡本部、捜索隊などの体制を整える準備をします。

・翌朝9時〜 遭難救助活動

 翌朝9時までに下山連絡が無い場合、遭難救助のための体制を正式に設置し、警察に連絡し、実質的な遭難対策活動を行います。
 

以上